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『ラブ&モンスターズ』考察・感想|ラストが残すもの、ダメ主人公が教えてくれること(ネタバレなし)

『ラブ&モンスターズ』考察・感想|ラストが残すもの、ダメ主人公が教えてくれること(ネタバレなし)

巨大モンスターが支配する終末世界を、戦闘が苦手な青年が一人で歩いていく映画だ。マイケル・マシューズ監督が「リアルに触れる質感」を追求した冒険アドベンチャーで、愛と絆の描写が緊張感の土台になっている。

監督 マイケル・マシューズ

主演 ディラン・オブライエン、ジェシカ・ヘンウィック

製作年 2020年

上映時間 109分

ジャンル アドベンチャー


※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。


目次

視聴方法

Prime VideoおよびU-NEXTで取り扱いあり(2026年9月時点)。Netflix、J:COM STREAM、music.jpでも取り扱いの確認あり。見放題・レンタルの区分や最新状況は各サービスで要確認。

Amazon Prime Video

あらすじ

モンスターが地上を支配する世界での、85マイル先の恋人を目指す旅の物語だ。巨大モンスターが地上を支配する世界で、シェルターに引きこもっていた青年ジョエルは、離れ離れになった恋人アミーとの再会を目指して単身、危険だらけの地上へ繰り出す。武器の扱いも戦闘スキルも人並み以下の頼りない主人公が、道中で出会う人間や動物と絆を深めながら前へ進んでいく冒険アドベンチャー。

見どころ

緊張と笑いと別れ、三つの感情の緩急が全編を貫いている。

愛すべき「ダメ主人公」の冒険

戦闘は苦手、メンタルも不安定。ジョエルは決してかっこいいヒーローではない。そのちょっとした情けなさと親しみやすさが、この映画の最大の武器になっている。世界がどれだけ過酷であっても、彼を応援せずにはいられない空気が生まれていて、その感情がそのまま冒険の緊張感に直結している。

緊張と緩和の緩急

和やかなシーンが続いたと思えば、一気にシリアスな展開が訪れる。この緩急のコントロールが絶妙で、ただのモンスター映画に終わっていない。クリーチャーのデザインや動きも独特で迫力があり、ユーモアと恐怖が共存するバランスは観ていて飽きない。愛や絆の描写があるからこそ、危機のシーンに本物の緊張感が宿っている。

ラストが残すもの、旅の意味

結末そのものは明かさない。ただ、この映画のエンディングは「どこへたどり着いたか」より「どう変わったか」を問うてくる。旅を通じて受け取ってきたもの、出会いと別れで積み上げてきたものが、最後の場面でひとつの形になる。静かな余韻で終わるので、観終えてからじわじわと何かが残る感覚がある。

出会いと別れが生む感情の蓄積

旅の途中で出会うキャラクターたちとの時間は決して長くない。それでも別れのシーンには強い寂しさがある。感謝の中に「もう二度と会えないかもしれない」という恐れが滲んでいて、その余韻が映画全体の人情味を支えている。犬のボーイも含め、短い時間の関係性をちゃんと描き切る丁寧さがある。

制作背景

企画は2012年に『Monster Problems』というタイトルで動き出したが、長らく開発が止まった状態が続いた。2018年10月にディラン・オブライエンが参加を表明し、その後マイケル・マシューズが監督として加わったことで、ようやくプロジェクトが動き出した。

マシューズは『Five Fingers for Marseilles』(2017年)でアメリカのエージェントと契約し、多くの脚本を読んだ中でこの作品に強く惹かれた。パラマウントのプロデューサーや幹部との交渉を経て、監督としての採用を勝ち取るために「非常に精緻なビジュアル・プレゼンテーション」を作成したという。

グリーンライトが降りるまでに約8ヶ月の折衝と予算調整、脚本作業があったと彼自身が語っている。脚本はブライアン・ダッフィールドとマシュー・ロビンソンが共同で執筆した。

2019年3月にはマイケル・ルーカーとアリアナ・グリーンブラットがキャストに加わり、同4月にはジェシカ・ヘンウィックとダン・ユーイングも参加した。本撮影は2019年3月25日にゴールドコーストで始まり、同年5月に終了した。

マシューズが撮影で一貫して重視したのは「触れられそうな質感」だ。「冒険とモンスターを実体として感じさせたかった。人工的なセットで森を再現するのではなく、本物の川で泳ぎ、本物の泥沼を転がる冒険感を出したかった」と監督は述べている。撮影と照明にも同じ自然な手法が貫かれ、クリーチャーについても「触れたら泥や葉が付いてきそうな生々しさ」を目指したという。※1

主演のディラン・オブライエンにとって、本作への参加はひとつの区切りでもあった。2016年、『メイズ・ランナー:最期の迷宮』の撮影中に走行中の車上から別の車に弾き飛ばされる重大な事故に遭い、顔面骨折と脳震盪、脳外傷を負った。その後、キャリアを静かに立て直す中で次に選んだ作品が『ラブ&モンスターズ』だった。※2

もともとパラマウント・ピクチャーズによる劇場公開が予定されていたが、COVID-19パンデミックの影響で方針が転換され、2020年10月16日にVODと限定劇場で公開された。製作にはショーン・レヴィとダン・コーエンが名を連ねており、ショーン・レヴィは「ストレンジャー・シングス 未知の世界」の製作陣としても知られている※3。撮影監督はラクラン・ミルン、音楽はマルコ・ベルトラミとマーカス・トランプが担当した※4。

2021年の第93回アカデミー賞では視覚効果賞にノミネートされており、モンスターのデザインや動きのクオリティは業界内でも高く評価された。日本では2021年4月14日よりNetflixにて配信が開始された※4。

感想

あまり期待していなかった、というのが正直なところです。

でも観てみると、これがちゃんと面白い。全体の雰囲気が良くて、短い尺の中で愛や絆の描き方がうまい。だからこそ緊張感が出る。タイトルそのまま、まさにラブ&モンスターズだった。

主演のディラン・オブライエンは『メイズ・ランナー』シリーズで走り続けるイメージがあるけれど、この映画のジョエルというキャラクターのほうが個人的には好きだ。ちょっと情けなくて、ちょっとダサい。そういう等身大の主人公のほうが、応援したくなる。かっこよすぎないから、危険な場面での緊張感が素直に伝わってくる。旅の途中で出会うワンちゃんが賢くて可愛いのも、この映画の大事な要素。

道中で出会うクライドとミノウも良いキャラクターで、彼らとの短い旅はどこか『ゾンビランド』を思わせる雰囲気があった。タラハシーとリトルロックがいて、ウィチタがいて、コロンバスがいる。そう考えると構造的な似通いはあるのだけど、それが気になるほど浮いてはいなくて、自然に物語の中に溶け込んでいた。

ほんのひとときしか行動を共にしなかったのに、別れのシーンが思いのほか刺さった。感謝の表情の中に、これで本当に終わりかもしれないという恐れが混じっていて、その微妙なトーンが誠実だと思った。絆の描写に手を抜いていないから、その感情が届く。そういうわけで、緩急のコントロールがうまい。和やかなシーンが続いた後、一気にシリアスに転換するあの感じ。緊張と弛緩の切り替えを信頼してリズムよく観ていられた。

クライドとミノウから教わった技術が後々の場面で役に立つくだりは、ちゃんと感動した。旅の中で人と関わり、何かを受け取って、それを使って生き延びる。シンプルな構造だけど、それがきちんと機能していると物語の重さが変わる。

音楽についても一言だけ。犬と出会ってから流れる曲を聴いて「聴いたことがある」と思ったら、Arcade Fireだった。『かいじゅうたちのいるところ』(2009年)で使われた「Wake Up」で広く知られているバンドで、その壮大なスケール感がこの映画の冒険感とよく合っていた。

世界観の参照先がいくつか思い浮かんだ。モンスターがいる終末世界と人間同士の絆という構造は『ゾンビランド』的。放射能汚染、ハイテクロボ、犬の同伴といった要素は『Fallout』を連想させる。そして走るディラン・オブライエンはやはり『メイズ・ランナー』。ただ、それらの「良いところどり」の印象が悪い意味ではなくて、むしろそれぞれの面白い部分を組み合わせてうまく機能させているように見えた。クリーチャーのデザインや動きも独特で、迫力と個性がある。

主人公のイラストを使った表現など、緊張感の中に緩い空気が流れていて、重苦しくなりすぎない。変わり果てた世界を1人で彷徨う姿には冒険感があってわくわくするし、最終的に仲間の元へ帰っていく流れも気持ちが良い。期待値が低かった分、得した気持ちで観終えた映画でした。

他の人の見方

Rotten Tomatoesでは批評家支持率93%、観客支持率89%という高い評価を記録しており、IMDbスコアは7.0/10に達している※5。

映画.comのユーザーレビューでは「当初B級モンスター・ムービーと思っていたが、絶滅危機となった世界における人と人との絆が根底に流れるヒューマン・ドラマとしての面白さがあった」という声がある※6。

B級映画への警戒感を持って観始めた人ほど、良い意味で裏切られたという感想になりやすい傾向がある。「重苦しくなく楽しく観られる」という評価と、「絆の描写がちゃんと機能していて意外に刺さる」という評価が、どちらも多く見られる。

こんな人に

・モンスター映画だけど重苦しいのは苦手、という人
・旅の途中の出会いと別れに弱い人
・頼りないけど憎めない主人公が好きな人
・『ゾンビランド』や『Fallout』の雰囲気が好きな人
・アドベンチャー映画を初めて観る人でも入りやすいテンポの良さがある


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