作品情報
視聴方法
- U-NEXT(2026年5月〜配信中)
あらすじ
1920年代、英国植民地時代のインド。部族の少女を英国軍に連れ去られたビームは、彼女を取り戻すために単身立ち上がる。一方、ラーマは大義を胸に秘めながら英国政府の警察官となっていた。対照的な立場に置かれた2人は運命に導かれるように出会い、固い友情を結んでいく。しかしある事件をきっかけに、それぞれの宿命が2人を引き裂いていく——。
見どころ
1. 「なんじゃこりゃ」を勢いで正当化する、桁外れのエネルギー
演劇的なオーバーアクション、ミュージカルさながらのノリ、サーカスかと見紛うアクロバティックなアクション。冷静に見れば「これはないだろう」と突っ込みたくなる場面も、作品全体が放つとんでもないエネルギーが全部ねじ伏せてしまう。大味に見えて、細部へのこだわりが半端じゃない。そのギャップが、この映画最大の魔法だ。
2. 名シーン・名セリフが止まらない、圧倒的な密度
一本の映画にこれだけの見どころを詰め込めるのか、と驚く。ド派手なアクションから、2人の男の友情が急速に深まっていく幸せなシーン、炎と水の対比が美しい対峙の場面まで。OPからEDまで息をつく暇がなく、かつBGMが壮大に鳴り響くことで、すべてのシーンに異常なほどの迫力が宿っている。
3. ナートゥダンスが持つ、文化的なカタルシス
インド映画ではお馴染みのダンスシーン。しかしこの作品でのダンスは、単なる”お約束”ではない。西洋のダンス文化に、自分たちのダンス文化で真っ向から対抗するという文脈を持ち、自然な流れの中で炸裂する。キレキレでパワフルなナートゥダンスと、音への完璧なハメ方。このシーンは、見た人の心を深くつかむ。
制作背景
ラージャマウリ監督はもともと「2人の主人公の間の友情を描きたい」という構想を出発点に本作を着想した。キャラクターを練る過程で、インドの独立運動家であるラーマ・ラージュとコムラム・ビームがほぼ同時期に故郷を離れており、その空白期間に何をしていたかが記録に残っていないことを知る。「2人が空白の期間に会い、友人になり、触発される間柄だったらどうなるか。実在の2人の空白期間の点と点をつないでフィクションとして作った」というのが、本作の核心的な発想だ※1。
監督・脚本はS・S・ラージャマウリ、原案はV・ヴィジャエーンドラ・プラサード、音楽はM・M・キーラヴァーニが担当。完成までに要した期間は約3年半。うち1年半はコロナ禍の影響によるもので、実質的な制作期間は2年ほどだったという。※2
キャスティングについても、監督には明確な眼差しがあった。「NTR Jr.は顔から純粋さが伝わってきて、無垢な感じを受ける。一方のラーム・チャランは、神秘的な悲しみをたたえた目をしており、悲しみを出すのではなく、感じさせてくれる。その2人の印象が主人公2人のキャラクターに合致した」と監督は語る。さらに、2人が現実でも友人同士であることも起用の決め手だったという。※1
タイトル「RRR」は、監督と主演2人の名前にすべて「R」が含まれることから付けられた仮タイトルが、そのまま正式タイトルになったもの。「大規模な映画には全言語共通で理解できるタイトルが必要」という監督の判断からだ。英語版のサブタイトルは「Rise Roar Revolt(蜂起・咆哮・反乱)」。原語であるテルグ語版のタイトルは「怒り・戦争・血」を意味する言葉を並べたもので、英語版とは受ける印象がかなり異なる。※3
興行面では、インド映画史上最大の製作費7200万ドル(約97億円)をかけ、全世界で興行収入1億6000万ドル(約220億円)を超える大ヒットとなった。※1日本でも2022年10月21日の公開から大ヒットロングランを続け、日本で公開されたインド映画として初めて興行収入20億円を突破した。※4公開から半年以上が経過しても復活上映やIMAX上映が行われ、応援上映やマサラ上映会にも多くの観客が集まり続けた。※5
受賞歴も多岐にわたる。S・S・ラージャマウリ監督がニューヨーク批評家協会賞監督賞を受賞。劇中の楽曲「Naatu Naatu」は第80回ゴールデングローブ賞最優秀主題歌賞を獲得し、第95回アカデミー賞では歌曲賞を受賞した。これはインド映画として史上初のアカデミー歌曲賞受賞となった※6。さらに第46回日本アカデミー賞では優秀外国作品賞を受賞している。※7
感想
楽しすぎて涙が出たのは、生まれて初めてかもしれない。
そんな体験、あるだろうか。嬉しくて泣くとか、感動して泣くとか、そういうことではなく、純粋に「楽しすぎる」という感情が溢れて涙になる瞬間。この映画は、そこに連れて行ってくれた。
正直なところ、最初は「ボリウッドの大作アクション」という先入観があった。大味な演出で、ノリで押し切るやつだろうと。でも違った。細部へのこだわりが尋常じゃなかった。だからこそ、常識的に考えれば「これはないだろう」というシーンも、すんなり受け入れられてしまう。作品全体のエネルギーが、観客の正常な思考を気持ちよく黙らせてくれるのだ。
冒頭、RRRというタイトルの意味が明かされる。その安直さに笑った。でもその数分後には、もう名シーンが生まれていた。この映画はそういう映画だ。
2人の主人公が出会うシーン。異なる目的を持ち、本来なら対立するはずの2人が、出会った瞬間から急速に仲を深めていく。その場面に流れるBGMが、なんとラブソングなのだ。あまりにもイチャイチャしていて、思わず笑顔になった。
かつて『ハーフ・オブ・イット』(2020年、アリス・ウー監督)で読んだ話を思い出した。プラトンの『饗宴』に出てくる、人間はもともと2つの顔と4本の手足を持つ結合体だったが、神々に引き裂かれ、以来「片割れ」を探し求めているという神話だ。『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001年、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督)にも引用されるこの話を、2人の男の友情劇で思い出すことになるとは。互いの素性を知らぬまま急速に距離を縮める2人のカットを見ていると、彼らが確かに片割れを見つけてしまったように見えてくる。ちなみに『ハーフ・オブ・イット』も『ヘドウィグ』も、同性愛を主題に据えた作品だ。
仲が深まれば深まるほど、残酷な結末が待ち受ける。それが分かっているから、2人の幸せそうな姿が切ない。
そして、ナートゥダンスのシーン。西洋の文化に、自分たちの文化で対抗する。その文脈の必然性と、キレッキレのダンスと、音ハメの気持ちよさが合わさって、なにか魂のようなものが揺さぶられた。ビーム役のNTR Jr.が普段は表情豊かなのに対し、ラーマ役のラーム・チャランは比較的無表情な場面が多い。でもダンスシーンだけは、これでもかという笑顔を見せる。そのギャップが、たまらなく良かった。
同年に観たMCU作品より、遥かに面白かった。映画は理屈じゃない。感覚と感情と魂に訴えかけてくるものが、本当に素晴らしい映画なのだと、改めて思わせてくれた一作だった。
こんな人に
・ハリウッドの大作アクションに少し飽きてきた人
・友情・バディものが好きな人
・ミュージカルやダンスシーンに心が動く人
・「勢いで全部ねじ伏せる」エンタメに元気をもらいたい人
・インド映画を見たことがない人でも、エンタメとして純粋に楽しめる入門作として最適
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🎬 同監督の関連作
出典
- ※1 日経クロストレンド
- ※2 GIZMODO Japan
- ※3 語学のよろず屋 SAPIENZA
- ※4 ムービーマネジメントカンパニー
- ※5 シネマトゥデイ
- ※6 映画.com
- ※7 シネマヒッツ

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