視聴方法
2026年6月時点では、Netflixで独占配信中。他の主要VODサービスでの配信はなく、国内盤Blu-ray/DVDも流通していないため、現状はNetflixが唯一の視聴手段となっている。
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あらすじ
天文学の博士課程に在籍するケイト・ディビアスキー(ジェニファー・ローレンス)は、地球に衝突する軌道を持つ巨大彗星を発見する。指導教員のランドール・ミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)とともに政府や大統領に警告しようとするが、誰もまともに取り合わない。メディアはエンタメとして消費し、大統領は選挙戦略の都合で動き、SNSは彼らをミーム化する。人類滅亡まで6か月という状況で、世界はまるで別の方向を向いていた。
見どころ
ブツ切りカットが生むスピード感
感情を爆発させたと思ったら、次のカットでは結果だけが映される。拘束されていたり、すでに別の場所にいたり。その過程は一切映さない。このテンポの良さがこの映画の核で、余分をすべて削ぎ落とした編集が138分をあっという間に感じさせる。見ていると、置いてかれそうな快感がある。
世界の映像が挟み込まれる意味
本編の合間に、世界各地の人々や動物、自然の映像がふと差し込まれる。このインサートが絶妙で、あまりにも馬鹿な展開が続くため忘れかけていた「地球が終わろうとしている」という事実を静かに思い出させてくれる。コメディとしての笑いと、その奥にある絶望感の対比。ここに皮肉の刃が宿っている。
豪華すぎるキャストが演じる「ズレ」
メリル・ストリープ演じる大統領、メディアのキャスター、IT富豪——それぞれが自分のポジションからしか物事を見ようとしない。その「ズレ」の連鎖が笑いを生みながら、同時に背筋を冷やす。ティモシー・シャラメやアリアナ・グランデまで集結した顔ぶれも見どころのひとつ。
制作背景
企画の発端:一本の電話から
本作のきっかけは、『バイス』公開後にデヴィッド・シロタがアダム・マッケイに、これまでのマッド・マックス型ポスト・アポカリプス映画とは異なる気候変動映画を作るよう働きかけたことにある。シロタはジャーナリストであり、元バーニー・サンダース陣営の演説執筆者でもある。「気候危機の報道が薄いのは、アルマゲドンのような彗星が来ているのに誰も気にしていない状態だ」という彼のアイデアを受け、マッケイが「それが題材だ」と応じ、共同で原案を書き上げた※1。
マッケイ自身は「気候危機への社会の無関心がいかに恐ろしく、かつ不条理に滑稽かということへの、増大する恐怖感からこの映画は生まれた」と語っている。※2
マッケイは『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015年)と『バイス』(2018年)に続く「世相風刺三部作」の完結として本作を位置づけており、サブプライム住宅ローン危機・政治介入に続き、気候変動への政治とメディアの不作為を正面から標的にした※3。
Netflixへの移行と製作体制
2019年11月にパラマウント・ピクチャーズが配給を発表し、マッケイが自身のプロダクション「ハイパーオブジェクト・インダストリーズ」のもとで監督・脚本・製作を担当することが発表された。その後2020年2月にNetflixがパラマウントから本作を買い取り、同タイミングでジェニファー・ローレンスのキャスティングが決定した。
キャスティングの舞台裏
マッケイはローレンスのために特別にディビアスキー役を書き下ろし、ディカプリオとアイデアを出し合いながら脚本に手を加えた。最終的にディカプリオが参加を決めるまでには4〜5か月を要した。ディカプリオ自身は長年にわたり気候変動を主題にした作品を探しており、ブラックコメディとして成立させられる本作の脚本に強く反応したとされる※4。
ディカプリオのほか、ケイト・ブランシェット(アカデミー賞受賞2回)、マーク・ライランス(同1回)、メリル・ストリープ(同3回)という受賞歴を持つ俳優陣が集結した、まさに異例の顔ぶれとなった。
撮影手法——コロナ禍とフィルムへのこだわり
主要撮影はコロナ禍の真っ只中、2020年11月中旬からマサチューセッツ州ボストン各地で開始し、2021年2月中旬に撮了した。ボストン市内各所がニューヨークの代替ロケ地として使用され、天文台・ホワイトハウスの廊下・大統領執務室・モーテルなどのセットはレッドスカイ・スタジオに建設された。
撮影監督は『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞を受賞したリヌス・サンドグレン。本作の主要部分はKodak 35mmフィルムで撮影されており、暗所・夜間シーンにはKODAK VISION3 500T、昼間の室内・曇天外撮影には250D、晴天の明るい外光下では50ASAを使い分けた。キャラクターが極度のストレスを体験するシーンでは、アートン・ペネロープ35mmカメラにコワ・マクロレンズを組み合わせたハンドヘルド撮影で俳優の顔に極限まで寄ることで、感情の圧迫感を視覚的に表現した。※5
タイトル「Don’t Look Up」には、英語の “look up” が「上を見る」と「(情報を)調べる」の二重の意味を持つことから、「真実を調べるな」という反知性主義への皮肉が込められている※2。
受賞・ノミネート歴
本作は第94回アカデミー賞で作品賞・脚本賞・編集賞・作曲賞の4部門にノミネートされ、第74回全米脚本家組合賞(WGA)では最優秀オリジナル脚本賞を受賞した。※6また、全米映画批評家協会とアメリカ映画協会(AFI)の双方から2021年のトップ10映画に選出され、第79回ゴールデングローブ賞でも作品賞(ミュージカル/コメディ部門)を含む4部門でノミネートを受けた。※7
配信記録
本作はNetflix史上最多となる単週視聴時間の記録を樹立し、公開後28日以内の視聴時間でNetflix映画歴代2位に輝いた。具体的には、2021年12月27日〜2022年1月2日の1週間で約1億5,229万時間を記録し、これはNetflixの映画単週視聴時間の新記録となった。※8
感想
ブラックコメディと知らずに見はじめた。気づいたときにはもう、笑っていいのか怒っていいのかわからない状態になっていた。
とにかくテンポがいい。ブツ切りのカットが気持ちいいほど連続して、138分があっという間に過ぎた。強く主張したと思ったら次のシーンでは結果だけが映される。拘束されてたり。その過程を映さないスピード感が、この映画のエンジンになっている。
笑えるシーンだらけなのに、笑えば笑うほどなんか怖くなってくる。大統領も、テレビキャスターも、誰もが自分のポジションからしか動かない。そのズレの連鎖が面白くて、同時に「あ、これ現実の話だ」と気づく瞬間がある。彗星が来ているのにSNSでミームにされる——今っぽくて、洒落てて、でも怖い。
合間に挟まれる世界の映像がいい仕事をしていた。あまりにも馬鹿な展開が続くせいで緊張感が完全に溶けるのだが、その隙間に動物や自然や人々の映像がふと差し込まれることで、「あ、この星終わるんだった」と引き戻される。コヤニスカッツィや『LIFE IN A DAY』に近いトーン。あの挿入があることで皮肉がより深く刺さった。
そして終盤の、あの「好きにやってくれ」感。諦めとも達観とも取れるあの空気感が、個人的にはかなり好きだった。潔さがあった。
レオ様の演技はさすがとしか言いようがない。「真摯な学者が少しずつ別のものになっていく」あの変化を、大げさにならず見せていた。笑える要素が細部まで詰め込まれているので、見逃したシーンがあってもう一度見たいと思っている。
コメディ映画として括ってしまうのはもったいない、というのが率直な感想だった。政治とメディアとSNS文化をこれだけ一本の映画に折り込んで、落語みたいな哲学的な余韻まで残してくれる。見終わったあと、空を見上げたくなった——いや、見上げるなと言われてるのか。
他の人の見方
Rotten Tomatoesでは305件のレビューで批評家支持率56%、平均スコア6.3/10。ピーター・ブラッドショー(Guardian)をはじめとする批評家からは「演出が直球すぎる」との声が上がり、Metacriticでも加重平均49/100と、批評筋での評価は大きく割れた※9。
一方でフォーリン・ポリシー誌は「カタストロフィズムを娯楽として消費する危険」を指摘するなど政治評論誌でも議論を呼んだ※10。気候科学者や環境活動家の間では「気候変動への社会の無関心を最も正確に描いた映画」として高く評価する声もある。脚本を共同で書いたシロタは批評家の「直球すぎる」という批判に対し、「気候運動の現場の苛立ちをそのまま描いた」と反論している※1。
批評家スコアが振るわない一方で、Rotten Tomatoesの一般視聴者スコアは74%と大幅に上回っており、Netflixの視聴記録を塗り替えるほどの熱狂的な反応を呼んだ。批評家と観客の間でこれほど評価が乖離した作品は近年稀で、それ自体がこの映画の風刺的テーマ——専門家の声が届かない社会——を皮肉に体現しているともいえる。
こんな人に
・政治やメディアの「ズレ」にうんざりしたことがある人
・ブラックコメディが好きで、笑いながら社会を考えたい人
・レオナルド・ディカプリオやジェニファー・ローレンスのファン
・SNS文化・反知性主義・気候変動といったテーマの考察に関心がある人
・コメディ映画はあまり見ないけど、テンポよく見られる社会派の作品を探している人
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