視聴方法
TSUTAYA DISCASおよびABEMAで視聴可能な状態が確認されている(2026年6月時点)。そのほかPrime Video、FODでも取り扱いがある。見放題・レンタルの区分や最新の配信状況は各サービスで要確認。
あらすじ
5歳で父を亡くし、その後母も失踪。祖母に育てられた八雲御子(池田エライザ)は、18歳で天涯孤独になる。そこへ叔父を名乗る雷土悟郎(オダギリジョー)が現れ、住む場所とアルバイトを用意する。その仕事の名は「ルームロンダリング」——訳あり物件に一定期間住み込み、部屋の履歴を浄化して次の入居者へ渡すというもの。バイトをこなすうちに幽霊が見えるようになった御子は、部屋に居座る霊たちと奇妙な共同生活を送ることになる。
見どころ
幽霊と人間の境界線が溶けていく感覚
御子の周囲には幽霊が普通に存在し、物語が進むにつれ、見ている側も「この人は生きているのか?」と感じ始める。人と霊の区別がつかなくなる演出が静かに積み上げられており、その感覚がやがてひとつの感情的な問いへとたどり着く。ゆるやかな日常描写の中に仕掛けが隠れている。
池田エライザの「無関心」の演技
池田エライザが演じる御子は、幽霊が現れても驚かない。この「見飽きた」「関わりたくない」という表情のトーンが絶妙で、孤独を内側に抱えたキャラクターをセリフ以上に語る。過剰に説明しない演技が、作品のゆるさと見事に調和している。
小道具が語る、御子の内面
アヒル型のライトや大きなヘッドホンなど、御子の部屋を彩る小道具がさりげなく彼女の孤独と体温を同時に表現している。音楽や光という「遮断」と「温かさ」の象徴が並列で置かれる構図は、監督のセンスを感じさせる。
制作背景
企画の起点:居酒屋での雑談からコンペへ
『ルームロンダリング』のアイデアは、監督の片桐健滋が下北沢の居酒屋で共同脚本家の梅本竜矢に話したところ、後日梅本が「企画をTCPに出しておいたよ」と連絡してきたことがきっかけだった。 2015年に開催された第1回TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM(TCP)において、総応募数474本の中から準グランプリを受賞したオリジナル企画であり、数々の日本映画の現場で助監督として経験を積んだ片桐健滋と、自身が映画制作会社を運営する梅本竜矢による共同作品として誕生した。※1
監督・片桐健滋のキャリア
片桐健滋は1979年大阪府出身。2000年に渡仏し、フランソワ・トリュフォーの編集で知られるヤン・デデ氏に3年間師事。帰国後、ミュージックビデオや編集の仕事を経て演出部へ転向し、崔洋一、豊田利晃、廣木隆一といった監督たちのもとで助監督を務めてきた。※2本作が長編映画の初監督作となる。
キャスティング
池田エライザが主人公の御子役を、オダギリジョーが叔父の悟朗役を演じるほか、伊藤健太郎、渋川清彦、光宗薫らが出演。※3 崔洋一や廣木隆一らのもとで助監督として経験を積んだ片桐にとって、記念すべき長編監督デビュー作となった。※4
公開・映画祭・コミカライズ
配給はファントム・フィルムが担当し、製作幹事はカルチュア・エンタテインメント、制作プロダクションはC&Iエンタテインメント/プラスディーが担当。2018年7月7日に全国ロードショー公開。※5 第21回上海国際映画祭と、カナダ・モントリオールで開催された第22回ファンタジア国際映画祭でも上映された。※6
映画上映に先駆けて片桐健滋・梅本竜矢の原案をもとに羽生生純によるコミカライズが行われ、2018年5月に上巻、同年11月に下巻が発売。同年11月には毎日放送の深夜ドラマ枠「ドラマイズム」にて、映画版のキャストを一部引き継いでテレビドラマ化された。※6
『アメリ』へのオマージュ
監督の片桐は公開直前に発表したコメントの中で、本作がジャン=ピエール・ジュネ監督の『アメリ』へのオマージュを含むことを明かしている。※7孤独を抱えながらも他者の問題に向き合う主人公像、色彩設計の鮮やかさなど、随所にその影響を見て取ることができる。
主題歌
主題歌は在日ファンクが担当。ファンクとソウルを基調にした同バンドの音楽が、作品の軽みと温度感を補強している。
感想
荻窪あたりに住んでいたとき、よく通る道の古びた店舗にこの映画のチラシが貼ってあった。ずっと気になったまま時間が経って、ようやく観た。そういう映画に限って、妙に引っかかる。
ゆるい。とにかくゆるい。でもそのゆるさが心地よくて、観終わったあとにじんわり温かい気持ちが残った。幽霊がいる世界って、こういう感じなら悪くないな、とポジティブな気分になれる不思議な作品だ。
御子が幽霊を見ても一切動じないのが印象的でした。驚かないんじゃなくて、もう関わりたくないんだと思う。幽霊が見えることは彼女にとってこの世界を嫌いになる理由でしかなかったのだろう。そう気づいたとき、このキャラクターの孤独の深さが一気に押し寄せてきた。
悟郎がなぜ御子にこの仕事を任せたのか。幽霊たちと向き合わせることで、彼女自身の心を少しずつほぐすためだったのではないか。失踪した母と向き合うための、遠回りの準備。その構造が静かにうまかった。
好きな人ができても、その人が本当に「そこにいる」のかすらわからない——この感覚への持っていき方が、個人的に一番刺さった場所でした。幽霊が見えるということの切なさが、ここで初めて輪郭を持つ。
気になった点もある。展開は読めてしまうし、ちょい雑な部分もある。それでも全部ひっくるめて「許せてしまう」温かさがある映画だった。漫画的、と言えば正確かもしれない。実際にコミカライズもされていて、まさにそういう手触り。
アヒルのライトと大きなヘッドホン。御子はなにを聴いていたんだろうか。
他の人の見方
映画.comやMOVIE WALKER PRESSのレビュー欄を見ると、「『シックス・センス』プラス『アメリ』といってしまえばそれまでだが、その組み合わせも決して悪くはない」「色彩もポップで愛らしく、同居人たちもなんだか愉快だ」という評が見受けられる※3。幽霊ものとしてではなく、孤独な人間の再生の物語として観るべき作品、という視点で語られることも多い。池田エライザの存在感が映画全体を支えているという点では、複数の媒体で一致した評価が出ている。
こんな人に
・幽霊ものなのに怖くない、ほっこりできる映画を探している人
・池田エライザ、またはオダギリジョーの新しい一面を見たい人
・孤独を抱えながらも前へ進もうとするキャラクターに共感できる人
・荻窪・杉並エリアの街並みが好きな人、ロケ地に親しみを感じる人
・幽霊が出てくる映画は苦手かも……という人でも、ゆるいコメディ感覚で最後まで見られる作品
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出典
- ※1 カルチュア・エンタテインメント グループ株式会社
- ※2 PR TIMES
- ※3 映画.com
- ※4 FILMAGA
- ※5 TSUTAYA/ツタヤ
- ※6 映画ナタリー
- ※7 映画ナタリー




