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『電送人間』考察・感想|ノイズのように現れる男の怖さは本物だった(ネタバレなし)

『電送人間』考察・感想|ノイズのように現れる男の怖さは本物だった(ネタバレなし)

監督 福田純

特技監督 円谷英二

脚本 関沢新一

主演 鶴田浩二、平田昭彦

音楽 池野成

撮影 山田一夫

製作年 1960年

公開日 1960年4月10日

上映時間 85分

ジャンル 怪奇スリラー・特撮SF

製作・配給 東宝


※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。


目次

視聴方法

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あらすじ

戦後の日本。連続する奇妙な殺人事件が世間を騒がせていた。被害者はいずれも旧軍関係者。現場には目撃者もいるのに、犯人の正体はまるで掴めない。多摩川園のお化け屋敷で男が突如現れた何者かに銃剣で刺殺され、目撃者の前で犯人が煙のように消えてしまうという奇妙な事件を皮切りに、被害者の関係者が次々と銃剣で殺害されていく連続殺人が発生する。週刊誌記者の桐岡勝(鶴田浩二)が事件を追ううち、ある装置の存在が浮かび上がってくる。人間を「電送」することで瞬間移動を可能にするという、常識をはるかに超えた技術。それは戦争の傷跡と深く結びついていた。

見どころ

円谷英二が生み出した「ノイズ人間」の映像

物体電送装置の原理を視覚で表現するため、特技監督の円谷英二は当時市場に流通していたテレビの「送受信の不具合で画面に縦模様が発生してしまう」という仕様をヒントに、青白く光る細かい横縞模様を合成し、頭から消えていくシーンを実現させた。電送人間役・中丸忠雄の身体に焼き込まれたその縞模様が、人間とも幽霊ともつかない存在を作り上げている。この演出は後年『ウルトラマン』でウルトラマンが地球へとワープするシーンなどへも応用されている。1960年という時代を考えると、発想と実現度の両面に驚かされる。

銃剣と戦争が刻んだ、戦後日本の歪み

「銃剣」という凶器が示すとおり、物質電送機を使って完全犯罪を行い、敗戦時の犯罪をめぐる復讐を果たそうとする電送人間と、彼を追う記者の戦いを描く犯罪スリラーである本作は、単純な特撮スリラーにとどまらない。高度経済成長期に差し掛かる日本社会で、戦争の傷跡がまだ生々しく残っていたことを、この作品はさりげなく伝えている。

とんでもなくコストのかかる犯罪計画

物語の仕掛けが「スマートじゃない」点も、ある意味で見どころだ。犯行後には証拠隠滅のために転送先の装置を毎度のように破壊していて、やっていることに対してコストが見合わない。金塊にまつわるエピソードが絡むことで、その資金源もなんとなく見えてくる。荒唐無稽なのに、細部のつじつまを合わせようとする誠実さがある。

制作背景

関沢新一の脚本を福田純が監督した怪奇スリラー。撮影は山田一夫。特技監督・円谷英二。パースペクタ立体音響。音楽は池野成が担当し、カラー・シネマスコープで製作された。

1960年4月10日に公開された本作は、『美女と液体人間』(1958年)に続く変身人間シリーズの第2作である。検討用台本の段階で「怪奇空想科学映画シリーズ」と銘打たれており、第3作『ガス人間㐧1号』(1960年)も本作品とほぼ同時期に検討用台本が完成しているなど、当初よりシリーズものとして製作が進められた。

監督は当初本多猪四郎を想定していたが、『日本誕生』と『宇宙大戦争』で多忙だったという事で新鋭の福田純が担当することになった。今作の演出・特撮面が認められ、これ以後のゴジラシリーズや東宝特撮を支えることになった。

鶴田浩二の主演起用にも人間関係が深く絡んでいる。福田と鶴田浩二は、鶴田が東宝に移籍して初出演した映画『男性No.1』で監督助手として出会って以来縁があり、『電送人間』で鶴田が主演を務めた。福田はプロデューサーの田中友幸が両者の仲を知っていて采配したのではないかと語っている。

キャストは東宝オールスター布陣で、鶴田浩二、白川由美、中丸忠雄、平田昭彦、河津清三郎、土屋嘉男、天本英世、児玉清らが顔を揃えた。中でも電送人間を演じた中丸忠雄をめぐる逸話は有名で、電送人間役になった中丸忠雄は完成した作品を見て「とんでもない作品に出てしまった」と青ざめ、田中氏からの『ガス人間第1号』のオファーを断ってしまった。このため、一時俳優業を干される羽目になってしまったらしい。

特撮班は『宇宙大戦争』と『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』を控えている合間を縫って年末年始に撮影を行った。なお、本作出演後ほどなくして鶴田浩二は東映へ移籍することになる。

福田純はその後、器用な中堅監督として娯楽映画を作り、1960〜70年代にはゴジラシリーズ、若大将シリーズなども手がけ、TVドラマ『西遊記』(1978)の演出も担当している。代表作としては『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966年)、『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年)、『ゴジラ対メカゴジラ』(1974年)などがある※2。

感想

不鮮明な男が突然、目の前に現れる。それだけで、もう充分だった。

円谷英二が作り上げた「電送」の映像表現が、とにかく印象に残る。人間がテレビのノイズのように霞み、消え、また現れる。説明がなくても、その不気味さと面白さは画面から伝わってくる。物語の仕組みが細かく解説されるわけではない。装置のパーツや温度の断片的な描写で、「なんとなくこういうことが起きているのだろう」という輪郭を掴むだけ。でも、それでいい。霧がかかったままのほうが、怖い。

「銃剣」という単語に、時代を感じた。いかにも戦後の日本映画、という匂い。内容にも戦争が絡んでくる。戦後の日本社会の歪みが、こんな形で結晶化するのか、と。

犯人の手口の「スマートじゃなさ」も、妙に面白い。巨大装置をいちいち現場に送り込んで、使い終わったら爆破。なんてお金のかかる犯罪計画だ。それを可能にする金塊の話が入ってくることで、歪んだ論理が一本の線につながっていく。荒唐無稽なのに、誠実。その不思議なバランスが、この映画の魅力だと思う。

派手な怪獣映画とは違う、静かな余韻が残るタイプの一本。戦後の歪みを描きつつ、特撮の遊び心が随所に光る、85分の凝縮された怪奇スリラーだった。

他の人の見方

映画.comのレビューでは、光学合成を多用した特撮を高く評価する声があり、電送装置のディテールについても「本当にテレポーテーションできそうなクォリティー」との評価がある※3。一方で、怪奇スリラー・サスペンス寄りの構成ゆえ、巨大怪獣ものや『マタンゴ』(1963年)のような派手さを期待すると地味に映る、との声もある。allcinemaでは平均3.9という評価に落ち着いており、レビュー数は781件。

こんな人に

・昭和特撮のレトロな映像表現に興味がある人
・円谷英二の仕事を怪獣もの以外でも見てみたい人
・戦後日本の空気が滲み出る、時代の刻印を感じる映画が好きな人
・サスペンスとSFが混ざり合った独特のジャンル感を楽しみたい人
・特撮映画を観たことがない人でも、85分とコンパクトで入りやすい一本

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