視聴方法
Netflixでの取り扱いが確認されています(2026年6月時点)。見放題・レンタルの区分や最新の配信状況は各サービスでご確認ください。
あらすじ
大学時代からの親友グループ5人。ある夜、帰り道に強盗と鉢合わせし、ひとりが命を落とす。半年後、生き残った4人は亡き友への追悼ハイキングとしてスウェーデンの深い森を訪れる。しかし森の中で不可解な出来事が相次ぎ、4人はそれぞれの心の奥底にある恐怖や罪悪感を呼び起こされていく。逃げ場のない森の中で、彼らを待ち受けるものとは。
見どころ
幻覚と現実が溶け合う演出
雷の光が唐突に静止し、そこからコンビニの空間が森の闇の中に広がっていきます。この視覚的な異化効果が鳥肌もの。夢か現実かわからない幻覚の描写が徐々にリアルと交差していく見せ方は、恐怖を頭ではなく皮膚で感じさせます。深い森の中だからこそ、人工物の違和感が何倍にも増幅されていく構造になっています。
北欧神話に根ざしたオリジナルクリーチャー「ヨトゥン(ムーデル)」
本作に登場するクリーチャーは「ムーデル(Moder)」と呼ばれる巨大なヨトゥン(北欧神話の神的存在)で、ロキの子孫にあたる古き神的実体として描かれます。その姿は枝角と腐りかけた肉体、不自然に伸びた肢体が絡み合う、忘れ去られた荒野の恐怖を体現したような異形です。クリーチャーのコンセプトデザインを担当したのはギレルモ・デル・トロ作品でも知られるコンセプトアーティスト、キース・トンプソン。ブルックナーとトンプソンが描いたビジョンは「北欧の動物神にいかに人間的な要素を与えるか」というものでした。北欧神話の文脈を知ると、物語の構造がさらに奥深く見えてきます。
4人全員を同時に蝕む「森の圧」
主人公だけが異変に気づくのではなく、4人全員が同夜に不可解な体験をします。この設定が効いている。「ひとりだけがおかしい」では疑念が生まれますが、全員が同時に異常をきたすことで、この森にとてつもないエネルギーが宿っていることが即座に伝わってきます。テンポを殺さず、恐怖の規模感を素早く提示する巧みな構成です。
制作背景
監督・脚本
デヴィッド・ブルックナーはアメリカ人監督で、本作が単独長編監督デビュー作にあたります。それ以前はオムニバスホラー『V/H/S』(2012)の「アマチュア・ナイト」短編や、『サウスバウンド』(2015)の「ザ・アクシデント」短編を手がけ、ホラーファンの注目を集めていた作家です。本作に至った経緯について、ブルックナーは「マネジメント会社を通じて脚本を読んで、あらゆる意味でまったく正気じゃないと感じた。それがとても新鮮だった」と語っています。脚本はイギリスのTV脚本家ジョー・バートンが担当。その後ブルックナーは『ザ・ナイト・ハウス』(2020)、Hulu製作の『ヘルレイザー』リブート(2022)と、現代ホラーの最前線を走る監督として地位を確立しています。
原作小説と受賞歴
原作は英国人ホラー作家アダム・ネヴィルが2011年にPan Macmillanから刊行した同名小説。ネヴィルは『The Ritual』をはじめ、『Last Days』『No One Gets Out Alive』『The Reddening』と、複数の作品で英国ファンタジー協会のオーガスト・ダーレス賞(最優秀ホラー長編賞)を受賞している、英語圏フォークホラー文学における重要な書き手です。映画版では原作の二部構成のうち、「森の中で何かに追われる4人」という前半パートに焦点を絞り、後半の社会派的な要素は別ベクトルへと再構成されています。
撮影:ルーマニアが「スウェーデン」になった理由
撮影はルーマニア中部の森林地帯でほぼ全編にわたって行われ、Canon C300 Mark IIおよびC700カメラと4K RAW収録を採用。ブルックナーはカルパティア山脈のトランシルヴァニア地方(標高約2100m)の森を選んだ理由を「標高が高いため暗い針葉樹林が広がり、北ヨーロッパの雰囲気を強く感じさせる」と説明しています。撮影監督アンドリュー・シュルキンドの映像について、Variety誌のTIFFレビューは「ブルックナーらが森そのものから引き出した不安な雰囲気に本作の有効性がある」と評し、「シュルキンドの印象的なレンズワークが俳優たちを敵対的な木々に矮小化・支配されるよう捉えている」と記しました。
クリーチャー造形の秘密
ヨトゥンのビジュアルエフェクトを手がけたのはVFXスーパーバイザーのベン・ホワイト率いるNvizibleで、作業はブルックナーによるクリーチャーのコンセプトアートを見たところから始まった。クリーチャーの「頭部の手」との至近距離での接触が必要な2ショットには実物大の頭部プロップが用意され、金属製のブームリグに取り付け、スタントパフォーマーが補助した。ブルックナーはVFXチームに対してヨトゥンを「ルークの罪悪感・プライド・虚栄心の象徴」として捉えるよう伝えており、VFXチームは「自分のハーレムを闊歩する牡鹿」のイメージでアニメーションを組み立てた。
公開・配給
本作は2017年9月8日にトロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネス部門でワールドプレミアを迎え、同年10月13日に英国で限定公開。その後2018年2月9日にNetflixで全世界配信が開始された。Netflixは英国を除く全世界配信権を約475万ドルで取得。これはその年のトロント国際映画祭の買い付け案件のなかでも最高水準の取引のひとつとなった。※1
感想
シンプルな映画でした。でも、それがよかった、と思います。
強盗事件で親友を失い、その場に居合わせながら逃げてしまったルーク。その罪悪感が森の中で何度も姿を変えて蘇ってきます。トラウマを幻覚として視覚化するアイデア自体はよくある手法かもしれません。ただ、この映画はその「見せ方」に本気を出していました。
雷の閃光が止まったまま固まり、コンビニの空間が森の闇の中に突然現れる。あのシーンで背筋が動きました。何もない深い森の中に人工物が侵食してくるあの違和感、蛍光灯が並ぶ異世界のような絵面——映像としてのインパクトが純粋にあります。「この映画は森の中にコンビニがあるという違和感を作りたかっただけかもしれない」と感じたくらい、あのシーンは突出していました。
ヨトゥンという造形もよかったです。人間とヘラジカが融合したような姿は、正直『もののけ姫』のシシ神を想起させてしまう部分もあります。でも、それはそれとして、このクリーチャーは独自のものとして成立していました。北欧神話の文脈を調べると人食いの伝承がちゃんと出てきて、世界観の骨格がしっかりしていることもわかります。
ひとつ気になったのは、ルークの内面の変化が最後まで曖昧なこと。ヨトゥンとの対峙を通じて何かを克服する、という流れを描こうとはしているのですが、正直なところあまり伝わってきませんでした。言葉では「絶対助ける」と言いながら、「自分が助かればいい」という姿勢は変わっていなかったように見えます。
でも、それはそれでいいとも思います。無理やり綺麗な成長物語にしていないところに、リアリティが宿っている気もしました。トラウマがまた増えただけで終わる。その皮肉さが、変に後を引く。
他の人の見方
「怪物のビジュアルは結構出来が良く好印象」という評価がある一方、「よくあるパニック系のホラー」という辛口の声も見られます。多くのレビュアーが「前半の雰囲気だけで怖い」という静かな恐怖を高く評価する一方、後半でクリーチャーが正面から映し出されると恐怖感がスケールダウンするとの指摘も目立ちます。北欧神話やフォークホラーの文脈を踏まえて読み解いた際に評価が上がりやすい一作と言ってよく、「クリーチャー目当てで観ると満足度が高い」という見方とあわせて、ストーリーよりも映像・造形面への評価が相対的に高い傾向がうかがえます。
批評サイトでは、Rotten Tomatoesで批評家スコア74%を記録しています。※2
よくある質問
原作はありますか?
原作はアダム・ネヴィルが2011年に発表した英国ホラー小説『The Ritual』です。本作は英国ファンタジー協会のオーガスト・ダーレス賞(最優秀ホラー長編賞)を2012年に受賞しています。日本語訳は現時点で未刊行ですが、原書(英語)は電子書籍を含む各フォーマットで入手可能です。
実話が元になっていますか?
本作は実話や実際の事件をベースにしたフィクションではありません。スウェーデンの人里離れた荒野を舞台に、北欧神話に根ざした超自然的なクリーチャーに追われる4人の友人を描いたフィクション作品です。ただし、北欧神話のヨトゥン伝承自体はスカンディナヴィア各地に実在する伝承であり、世界観の土台は神話・民俗学の知識に基づいています。
クリーチャーの名前と正体は何ですか?
クリーチャーは「ムーデル(Moder)」と呼ばれるヨトゥンで、ロキの子孫にあたる古き神的実体として描かれており、信者に不死を与える代わりに生贄を要求します。その姿は枝角、人間に似た手が巨体から伸びた異様な四肢など、断片的に提示されながら最終幕まで全体像が明かされません。この「見せない」戦略が恐怖の持続に大きく貢献しています。
監督の他の代表作は?
デヴィッド・ブルックナーは本作に続いて、レベッカ・ホール主演の心理ホラー『ザ・ナイト・ハウス』(2020)と、Hulu製作のクライヴ・バーカー原作リブート『ヘルレイザー』(2022)を監督しています。オムニバス作品では、『V/H/S』(2012)、『サウスバウンド』(2015)、『V/H/S/85』(2023)の各短編も手がけています。いずれも独特の雰囲気と心理的な恐怖を重視するブルックナーのスタイルが一貫して表れています。
続編はありますか?
現時点で続編は製作・公開されていません。原作者のアダム・ネヴィルはその後も複数の長編小説でオーガスト・ダーレス賞を受賞しており、ほかの作品の映像化は続いています。制作会社イマジナリウムはネヴィルの別作品『No One Gets Out Alive』も映画化(2021年、Netflix配信)しており、同ユニバース的な展開ではないものの、原作者の世界観はスクリーンへの移植が続いています。
こんな人に
・深い森や閉鎖空間が舞台のサバイバルホラー・フォークホラーが好きな人
・北欧神話やヨトゥン伝承に興味があり、考察しながら観たい人
・説明過多にならないシンプルな恐怖演出が刺さる人
・美しい自然の風景と不気味さのギャップを楽しみたい人
・『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『ザ・ディセント』系の雰囲気が好きな人
・ホラー映画があまり得意でない人にも、94分とコンパクトで観やすい一本
関連商品
🎬 北欧の森×フォークホラーの代表作
🎬 同監督ブルックナーが参加した代表作

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