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REVIEW

『スーパーマン』(2025)考察・感想|弱さから始まる新DCUの幕開け(ネタバレなし)

『スーパーマン』—ヒーローは、一人じゃない

監督 ジェームズ・ガン

主演 デビッド・コレンスウェット、レイチェル・ブロズナハン

製作年 2025年

製作国 アメリカ

上映時間 129分

配給 ワーナー・ブラザース映画

ジャンル アクション/アドベンチャー/スーパーヒーロー


※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。


目次

視聴方法

2026年6月時点では、TSUTAYA DISCASでDVD/Blu-rayレンタルが可能。Amazon Prime Video・U-NEXTでも取り扱いがあるが、いずれも有料レンタル/購入(PVOD)扱いで、Prime会員・U-NEXT月額プランの見放題対象外なので注意。配信状況は変動するため、各サービスで要確認。

あらすじ

異星人でありながら、地球のメディア企業デイリー・プラネットで記者クラーク・ケントとして二重生活を送るスーパーマン。国境を越えたヒーロー活動が問題視され、恋人ロイス・レインや天才科学者で大富豪のレックス・ルーサーから正当性を問われ、心が揺らいでいく。やがて彼は、ルーサーと超巨大生物カイジューという前例のない脅威に直面することになる。

ジェームズ・ガンが脚本・監督を手がけた本作は、DCユニバース(DCU)の記念すべき第1作にあたる。DCU「チャプター1:ゴッズ・アンド・モンスターズ」の幕開けを飾る一本でもある。ガン自身が「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで培ったポップな語り口と、スーパーヒーローの根源的な問い——「善であることに意味はあるか」——を正面から向き合わせた、これまでとは一線を画すスーパーマン像が展開する。

見どころ

「負けから始まる」という鮮烈な幕開け

過去作では圧倒的なパワーで無双するイメージが先行していたスーパーマン。本作はそのイメージをいきなり裏切るところから始まる。余計な前置きをすべて吹き飛ばし、何かがもう動いている冒頭の空気感。弱さから始まる英雄の物語は、見る者の想像力をかき立て、これまでとは違うスーパーマンへの期待をじわじわと膨らませていく。

ガンはインタビューで「このキャラクターは気高く、美しい」と語り、子どもの頃から「スーパーマンの純粋さを愛していた」と振り返っている。その言葉通り、本作のスーパーマンは「強さ」ではなく「善さ」を体現する存在として描かれており、冒頭の敗北シーンはその主題を最も雄弁に語る。

ミスター・テリフィックの革新的なバトルシーン

本作で最も映画的な発明と言えるかもしれないシーン。エディ・ガテギが演じるミスター・テリフィックが浜辺の基地で戦うくだりは、カメラが彼を追うのではなく、ロイス・レインの背後から360度撮影するという手法をとる。バトルをドタバタ劇としてコメディタッチで描き切るこのアイデアと、センス抜群のBGMの組み合わせは必見だ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で培った「混沌をエンタメに昇華する」ガン流の演出が、スーパーマンという素材の上でも完璧に機能している。

多様なヒーローたちが語る「一人じゃない」というメッセージ

グリーン・ランタン(ネイサン・フィリオン)、ミスター・テリフィック(エディ・ガテギ)、メタモルフォ(アンソニー・キャリガン)、ホークガール(イザベラ・メルセド)など、複数のヒーローが登場する。絶対的な存在に頼るだけではなく、それぞれが力を発揮できるという世界観の構築は、ジェームズ・ガンが一貫して描いてきた多様性への眼差しと直結している。アジア系キャストの積極的な起用も含め、その姿勢が画面の隅々に宿っている。

制作背景

企画から公開まで——「レガシー」から「スーパーマン」へ

本作の前身となる企画は、DCEUのヘンリー・カヴィル版スーパーマンの続編として2014年10月頃から動き出していたが、『ジャスティス・リーグ』(2017年)の製作難航を経て、2020年5月頃には頓挫していた。

ガンが新たなスーパーマン映画の制作に着手したのは2022年8月頃。同年10月にピーター・サフランとともにDCスタジオの共同CEOに就任し、新DCUの構築を開始。同年12月には脚本を手がけていることが明らかになった。翌年1月に邦題「スーパーマン:レガシー」が発表され、2023年3月に監督就任が正式決定。コレンスウェットとブロズナハンのキャスティングは同年6月に発表された。その後、2024年2月末までにサブタイトル「レガシー」が外れ、撮影がスヴァールバル諸島(ノルウェー)でスタートした。

撮影ロケーション——スヴァールバルから、アトランタへ

撮影は2024年2月29日に開始。ガンが「孤独の要塞」のロケ地として選んだノルウェー・スヴァールバル諸島での1週間に及ぶ撮影からスタートした。その後、主要撮影はジョージア州アトランタのトライリス・スタジオを中心に行われ、ジョージア州内各地やオハイオ州でもロケが実施された。撮影は7月に終了している。

原作コミックへの敬意——アート・ディレクションに刻まれた「オールスター」

本作の着想源となったコミックとして公式に挙げられているのは、マーク・ウェイドほかによる『スーパーマン:バースライト』(2003〜04年)、グラント・モリソン&フランク・クワイトリーの『オールスター・スーパーマン』(2005〜06年)、ジェフ・ジョーンズの『スーパーマン:ブレイニアック』(2008年)など複数の名作だ。

なかでも『オールスター・スーパーマン』の影響は美術面にも及んでいる。ガン自身は「制作室にはフランク・クワイトリーのアートを貼り詰めていた。ジェイミー・グラントの色彩設計が映画の配色に強くインスパイアした」と証言。さらに「スーパーマンのコンピューター周りの意匠は、『オールスター』に登場する機械のデザインにヒントを得た」とも語っている。

キャスティング——「パール」の映写技師が、スーパーマンになった日

クラーク・ケント/スーパーマン役のデビッド・コレンスウェットは、ホラー映画『Pearl パール』(2022年)や『ツイスターズ』(2024年)で注目された俳優。ガン監督は『Pearl パール』での彼の映写技師役を観てスーパーマン役への起用を決めたという。悪役レックス・ルーサーを演じるニコラス・ホルトはX-Men4作品にビースト役で出演後のスーパーヒーロー映画回帰となり、ガンは「これまでと全く異なる、決して忘れられないレックス」と予告していた。また、ブラッドリー・クーパーが父ジョー=エルの声を、アラン・テュディックがAI「ゲイリー」の声を担当している。

スタッフ・クルー

監督・脚本をガン、製作をピーター・サフランとガン自身が担った。撮影監督はヘンリー・ブラハム、編集はジェイソン・バランタイン、クレイグ・アルパート、ウィリアム・ホイの3名、プロダクション・デザインはベス・ミクル、コスチューム・デザインはジュディアナ・マコフスキー、音楽はジョン・マーフィが担当した。ジョン・ウィリアムズによる歴代スーパーマンのテーマ曲も引き継がれており、合唱版やギター主導のアレンジなど複数のバリエーションが劇中に登場する。

興行成績

本作は2025年の全世界興収で最初に6億ドルを突破したスーパーヒーロー映画となった。最終的な全世界興収は6億1,870万ドルに達した。開幕週末の全米興収は1億2,200万ドルを記録し、海外でも9,500万ドルを加算。事前予測(約1億ドル)を大きく上回るスタートを切った。批評面では、ロッテン・トマトで批評家スコア83%を記録し、クリストファー・リーブ版以来最高評価のスーパーマン映画となった。

感想

見終わって、正直なところ混在している感情がある。満足感は高い。でも何かが引っかかる。

冒頭、負けから始まる展開にまず驚いた。「余計なことは吹っ飛ばして、何かがもう始まっている」——これがジェームズ・ガンだ、と思った。過去のスーパーマンが積み上げてきた圧倒的無敵イメージをぶっ壊す気概は、画面からはっきり伝わってくる。その姿勢は正しいと思う。

ただ、それが仇になった部分もある。

基本設定を引き継ぎつつ出自や幼少期・家族関係を大幅に省いたことで、スーパーマンという存在の核心——「自分は何者か」という問いがどうしても薄くなってしまった。地球人でも純粋なクリプトン人でもないあの葛藤こそが、このキャラクターの最も人間的な部分だと思っているので、そこが表層をなぞる程度にとどまっていたのは惜しかった。最後に両親の映像をずらっと見せられても、「遅い…」と感じてしまったのが本音だ。

それでも、ミスター・テリフィックが浜辺の基地で戦うシーンは本当に良かった。ロイス・レインの背後からの360度撮影という発想、バトルをドタバタ劇としてコメディタッチで描き切る手腕、BGMのセンス。これは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で培った経験がそのまま昇華されていると感じた。

アクションシーンの質感についても語りたい。CGやVFXを使いながらも、アナログ感を大切にした撮影・演出が随所にある。空中を飛ぶシーンをアップで捉えたときの漫画的なパース感。あの「手触り」が好きだ。

「ヒーローは一人じゃない。君だってヒーローになり得る」——そのメッセージを体現するためにガンが選んだ演出上の選択も見えてくる。ジャスティス・ギャングをあえて非協力的に描いて登場機会を絞り、最後の場面で爆発させる構成。アジア系キャストの積極的な起用も含め、多様性への眼差しはガン作品の揺るぎない軸だ。

惜しいと感じる部分はある。でも、新しいDCユニバースの幕開けとして、その熱量は本物だった。

他の人の見方

本作はロッテン・トマトで批評家スコア83%を記録しており、クリストファー・リーブ版以来最高の評価という声が上がっている。オーディエンス・スコアは93%と、批評家以上に一般観客から高い支持を受けている。

「優しさ」「善人であることの強さ」をテーマに据えた人間味のある描写が幅広く評価されており、「ワーナー・ブラザース傘下のDCスタジオにとって、文句なしの勝利」と評する声もある。一方で、既存ファンからは出自描写の薄さや幼少期エピソードの省略を指摘する声もある——これはこちらが感じた引っかかりとまさに重なる部分だ。

日本での評価も高水準で、複数の映画レビューサービスで軒並み高スコアを記録。「BGMが良く、新生DCUの始まりとして期待値を超えた」という声と並んで、「スーパーマンが基本的にボコボコにされていて意外。SNSなど暴力以外の方法での攻撃も描かれている」と、従来のスーパーマン像との差異に注目する声も多い。

よくある質問

原作コミックはありますか?

本作は単一の原作ではなく複数のコミックを参照しており、なかでもグラント・モリソン&フランク・クワイトリーの『オールスター・スーパーマン』(2005〜06年)、マーク・ウェイドらによる『スーパーマン:バースライト』(2003〜04年)などが主要な参照元として公式に挙げられている。映画の世界観や登場人物に興味を持った方は、これらのコミックを読むとよりいっそう楽しめる。

前作・旧DCEUとのつながりはありますか?

本作が属する新DCUは、『マン・オブ・スティール』(2013年)に始まる旧DC Extenedd Universe(DCEU)の継続ではなく、完全な新シリーズとして位置づけられている。2025年の本作でそのリセットが正式に完了した。旧シリーズの予備知識は一切不要で、本作単体から楽しめる設計になっている。

監督ジェームズ・ガンの代表作は?

ガンはMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)でも辣腕を振るったDC・Marvel両スタジオを渡り歩いた異色の監督だ。代表作には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)、その続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017年)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023年)のほか、DC作品では『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021年)がある。本作はDCスタジオがガン&サフランの新体制のもと、より統一されたストーリーテリングのアプローチで構築した宇宙の第1作だ。

続編の予定はありますか?

続編にあたる『マン・オブ・トゥモロー』(仮題)では、コレンスウェットがスーパーマン役を、ホルトがレックス・ルーサー役を、ブロズナハンがロイス・レイン役を再演。さらにミリー・アルコックのスーパーガールやイザベラ・メルセドのホークガールも登場予定だ。スーパーマンとルーサーが手を組み、超知性を持つエイリアン・アンドロイド「ブレイニアック」という強大な脅威に立ち向かうストーリーが示唆されている。

デビッド・コレンスウェットは他にどんな作品に出ていますか?

コレンスウェットはホラー映画『Pearl パール』(2022年)と、竜巻サバイバル映画『ツイスターズ』(2024年)への出演で注目を集めた俳優だ。まだキャリアは比較的短いが、ガン監督が『Pearl パール』での演技を観てスーパーマン役を射止めたという逸話が示す通り、圧倒的な存在感と静かな強さを持つ俳優として業界内での評価は高い。

こんな人に

・ジェームズ・ガン版ならではの「軽さと重さが同居する」ヒーロー映画を求めている人
・既存のスーパーマン像に飽き足らず、まったく新しい解釈の考察・感想を求めている人
・アンサンブルキャストの掛け合いや、脇役が輝く群像劇が好きな人
・CGに頼りすぎない、アナログ感のある映像表現・撮影手法に関心がある人
・スーパーヒーロー映画をあまり見たことがないけれど入口を探している人——レーティングG(全年齢対象)、出自説明を省いた分テンポが速く、シリーズ予備知識なしでも楽しめる設計になっている

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